私が生きてこなかった人生

ためらわず踏み出してゆくわ

23歳、観劇オタク歴5年の妄言を聞いてほしい

2015年11月4日。私の運命がどどどーっと一変した日。東京宝塚劇場の1階センターブロックのど真ん中、たしか18列目だったと思う。いつも通り高校の制服に身を包み、でも慣れない劇場の椅子に座り、浮き足立った18歳は気づきました。

 

「私の人生に足りないのはこれだ!!!!!」

 

ということで、あれよあれよという間に宝塚、ミュージカル、台詞だけのお芝居まで、お金の許す限りなんでも観たい舞台大好き人間に育ちました。5年も劇場に通うと段々と思うところも出てくるわけで、今回はそんなことを3つほど書いてみようかなあと。舞台が好きで、もっともっと面白い作品が観たい。心がぶるっとして欲しい。そんな気持ちで日々劇場に通う私の思いを書き留めさせてください。

 

・学生にお芝居を観てもらう、演劇に触れてもらう機会は作った方がいい

私の初観劇は高校の芸術鑑賞会という行事がきっかけでした。それまでの知識といえばオペラ座の怪人の映画版を金曜ロードショーで観たことがあったぐらい。学校の先生によって「芸術を観てこーい!」と特別にチャンスを作ってもらわなければ、1万円近いお芝居に触れる機会なんて訪れなかったと思うのです。

つい最近も文化面での東京・地方論争がTwitterでわんさか繰り広げられていましたが、例え都市部に住んでいたって一度でも劇場で演劇を観たことのある人というのは限られています。事実、私も生まれてからこのかた、ずっと首都圏と言われる地域の人間です。

でもそんな未体験の人だって、一度観ればみるみるうちにハマっていきます。私だけでなく、「この作品のテーマ好きそう!」と思って劇場に連れて行った大学の友人も、当時芸術鑑賞会で一緒に観劇していた同じ高校の友人も、その友人にDVDを貸したときに一緒に観てくれたという友人の大学の同級生(複数人)も、みーんな観劇が好きになってる。いつの間にか劇場に通う人になっている。これすごい打率じゃないですか?ある意味、布教さえすれば勝手に信者は増えるんです!!フランシスコ・ザビエルもびっくり!!すごい!!

最初に触れる機会さえあれば間違いなく観劇人口は増えます。せっかく魅力ある作品が古今東西に溢れているのだから、面白いものは摂取しないともったいない!そして観る人が増えれば、もっともっと良い作品が生まれる可能性も高まる!

学生団体と被るとやだな〜とか、貸切が多くて困っちゃうな〜なんて思われる方もいるかもしれませんが、昔の私のようなまだ見ぬシアターゴアーのためにも、うふふと温かい目で見守っていただけたら嬉しいです。

 

・上演した土地以外でも観られる方法を作るべき

新型コロナウイルスが蔓延してから、公演の配信が増えました。おかげさまで、私も国内から海外まで新しい作品にたくさん出会えています。

以前よりもさらに劇場に行きたくても行けない人、行きにくい人が浮き彫りになった今、進化を期待しているのが配信、そして過去公演のアイカーブです。そして、これらは初めての人が従来のチケット代全額や時間を投じる前の入り口にももってこいの方法。観て良かったと思ったら、次は劇場へ観に行こうときっと思うはずです。「配信を観た、じゃあそこで終わり」にはなりません。演劇に触れたことのない人だって、コンサートやライブやイベントで、生で味わうことの価値を知っているはずだから。さらに都会と地方の地域格差を埋めていくためにも、配信やアイカーブのような手段は有効。

狙いうちにしてしまうようですが、特に新国立劇場のアイカーブは情報センター以外でも観られるようになってほしいと願っています。海外の配信を観ていても公共の機関が作っているところは強いです。国立の劇場だからこそ、ぜひよろしくお願いします!!(NHKでの放送もありがたく拝見してます!)

 

・観客を含めた色々な視点、立場の人々で、作品を揉める機会があったらいいのではないか?

カルチャヴィルさんが開催されているNTLiveの語る会。ナショナルシアターライブの上映作品について、作品の背景に詳しい先生方や翻訳を担当された方といったパネラーのみなさんと、会場に集った参加者が質問や感想を共有しようという大変素晴らしいイベントです。これに初めて参加したとき、いかに自分が自分だけの視点に頼っていたのか本当にびっくりしてしまって。ただ知識のあるなしの差だけでなく、焦点を当てているもの、それへの視点、そもそも持っている考え方。ここにいる人は全員が同じ物を観たはずなのに、人によって全く捉え方が違うんだなぁと衝撃でした。(ちなみに昨年のAll About Eveの回です。)

作品、演出、パフォーマンスなどに対しての疑問だったり感想というのは尽きないわけで、観たことを共有して、他の誰かの視点も得る機会がSNSや友人同士のコミュニティだけでは足りないなぁと感じています。そもそも知り合うという時点で何かしらバイアスがかかっていたり、価値観の似た人同士なのだから、比較的意見が似てきやすいという側面もあります。本当は、自分じゃ思ってもみないような感想に出会えたら面白いのに!

もっと理想的なのは、何も知らないまま客席で観たからこそ思ったことを作り手の方にフィードバックして、話し合えること。いろんな意見を持った人が集まれば、作品自体はもちろん、文化としてももっと良いものになるはずですよね。

いつものようにアンケートやお手紙という形で、こちらからほぼ一方的に投げているのも場合によっては一種の暴力性を孕んでいるような気がして、時たま心がざわざわしています…。仮に返答なり、説明なり、反論なりしたくても、簡単にはできないですし。けれど愛は伝えたいときに伝えなければと思って、その危険からは目を瞑りつつめちゃくちゃ送っています。(ごめんなさい……)

いずれにしても、作品を生み出してくださったから、何かを投げかけてくれたから、客席でそれを受け止められて感想も溢れ出てくるのです。自分の中で持ったままとか、一方通行ではなく、議論や対話のような形式のコミュニケーションが豊かになったらいいなと思います。

 


さて、ここからは思い出話ですが、2年前NYに行ったときにミッドタウンのシェイクシャックでご飯を食べていたら、隣のお姉さんが私の荷物に気づいて話しかけてきました。「さっき観劇してきたの?」「えーウィキッド!?」「それは良いね〜!最高だよね〜!!」って。そんなふうに笑顔で声をかけてくれたのが本当に嬉しくて楽しくて。しかも同じようなことが滞在中、2度もあったんです。街に劇場が浸透してるってこういうことなのかもしれないと身をもって感じたので、そんな場所に東京もなったらいいな〜♡素敵〜♡うっとり〜♡なんて妄想してます。もちろんほかの地域もなのだけれど、まずは東京がなってくれたらちょっとずつ広がりそうだよね、と願いを込めて!

 

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こういう看板の並びもあったら壮観だよね〜なんて!

 

長々となってしまいましたが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。

そして、劇場に行く機会をくれた高校の先生、開演アナウンスのすぐ後に振り向いた瞬間から虜にさせてくれた北翔海莉さん、ここまでに出会えたご贔屓方、いつも観劇や感想戦に付き合ってくれる友人たち、作品を作ってくださっている全ての皆さま、劇場で感動を味わうたびに、心から感謝しています。これからの1年も、その先の5年も、10年も、ルンルンで劇場に足を運びたいです!わーい!

 


おわり