トップコンビのその先にーー明治座「Summer Night's Dream」
2016年11月20日。
大好きな人が宝塚を退団した。世界中の誰よりも幸運なことにチケットを持ち劇場に向かって、涙でボヤボヤになりながらも必死に目を開きペンライトを振った。真っ直ぐに舞台の中心へ向かう光。間違いなく劇場中が同じ気持ちだった。
これ以上のものは今日を限りに生まれなくなるんだ。そのことへの寂しさと、たった今向き合えている嬉しさが、ぐるぐるぐるぐる頭のなかを巡っていく。
はずだったのに。
2019年8月28日。
みちふうと呼ばれた二人は、見事なまでにトップコンビの枠を壊してくれた。
初めて宝塚を観た時からときめき続けてきたみちふう。みちこさん(北翔海莉さん)とふうちゃん(妃海風さん)の軌跡を追い続けること早4年。そのうち主演男役とトップ娘役としてのお二人を観たのはたった1年しかない。それでも短くも幸せな期間の思い出と、退団してからも仲睦まじい写真が更新されるふうちゃんのインスタと、久しぶりに共演された際の甘酸っぱさでいっぱいになるような並びを胸に生きてきた。みちふうの姿が更新されるたびに、あの11月20日と重ねてときめいていたわけである。
当然、明治座 Summer Night's Dreamでの共演が発表されたときにも、それを楽しみにチケットを取った。
さすがクラブセブンの玉野先生!とだけでは言い尽くせないレベルの選曲と演出。めちゃくちゃ面白いし、めちゃくちゃカッコいい。2曲目のOn My Ownをみちこさんが歌う時点で今までのコンサートやショーの常識が通じないことを悟りつつ、あまりの色鮮やかな歌唱に号泣した。その後もサカケンさんの母音法アッコさん(アドリブ)や妃海・松田聖子・風さんによるレコード大賞受賞バージョンの赤いスイートピー(アドリブ)に激しく腹筋を捩られ、迎えた2幕。時は来たのである。
共にドレスで登場したみちふうが歌ったのは、Let It Goだった。
「だってもう自由よ なんでもできる」
そう力強く歌ったふうちゃんに、満開の向日葵のような笑みを向けたみちこさんが未だに忘れられない。間違いなく“元タカラヅカのトップコンビ”という呪縛を解き、それぞれが独立した女優として自由を手にした瞬間だった。
いや、縛られていたのは私のほうで、お二人はとっくに自由になっていたんだと思う。
「ありのままの姿 見せるのよ」
「ありのままの自分になるの」
この上なく素晴らしいハーモニーを聴きながら、ずっとずっと覚えていようと思った。
トップコンビみちふうはハッピーエンドを迎えて終わった。
でも、みちこさんとふうちゃんの歴史はそれぞれ続いて、時折交わる。
それだけで心がホカホカに温まって幸せなのである。
大好きなみちふうがこれから観せてくれるのはきっとどこか懐かしくも、まだ知らない景色だから。
P.S.
昨日のラブリーみちふうちゃんです♡
https://www.instagram.com/p/B4zqZgMFQ-v/?igshid=sb3lzpndp13a