私が生きてこなかった人生

ためらわず踏み出してゆくわ

テクノロジーなんてクソ喰らえだーー「Defiled-ディファイルド-」成河×千葉哲也

観た!2月ぶりの成河さんのお芝居、ディファイルド。8月1日(土)18時半公演。

 

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私には、自傷行為のような痛みと傷がズタズタに刻み込まれた。観たキャスト、組み合わせ、その日の演技、観ている人の持ち合わせているもの。全部同じなんてことは決してないので、本当にその時、その人よると思うのですが、めちゃくちゃ怖かった。目の前で自分が死んでいくのを観ているようだった。

 

ハリーの頑固さとか妥協できなさとか、熱とか、生きていくうえ上では強力な武器になるはずなのに、固持したまま死という側面が近づくと全部弱さに変わってしまう。ある一つのものを突き通すためなら他の選択肢を洗いざらい全部捨てられる。自分の命だろうと未練がない。だから、"無敵"になれる。手練れ中の手練れの刑事である千葉さんブライアンにもだから勝てる。

 

でもその勝ちは本当の勝利なんだろうか。信念を押し通して得たものは?むしろ失うものの方がずっと多い。だからってそんなの重々分かっていても、止まれないのがこの人の怖さなんじゃないか。そしてそれは自分にも似たものを感じるわけで。

 

"無敵"になれる人は強いです。「ミスサイゴン」のキムも、「海の上のピアニスト」のノヴェチェントも強いです。彼らはある一点のために全てを投げ出せるから。でもそれはとてもとても繊細で、ギリギリのバランスを保っている。だから弱くて脆い。危うい。

 

人って、私って、案外簡単に死んじゃうのかもと思いました。そういうのはできれば見ない方が幸せなのだろうけれど、無理やりにでも向き合わせてくれる劇場が、客席が好きです。70分一度たりとも目を逸らすなんてできなかった。苦しかった。

 

好きな役者さんのなかでも特に成河さんは、自分の内側の奥底にある、目を背けたいようなものまで抉り出してくれる力が強い俳優さんだと感じる。成河さんというか、成河さんを通したキャラクターが、さらに私の身体までも通っていく感覚がある。だから向き合うときは心して挑まないと痛い目を見ます。恐ろしい存在です。

 

Twitterのレポなどを読んでいると、同じキャラクターでも演る人や回によって現れるものが違って、観た人でも感じ方が違って、面白い作用が起こるんだなぁとゾクゾクしています。私も配信ではありますが、他のバージョンが観られるので楽しみです。きっとまた、違った痛みなんだろうなあ。