私が生きてこなかった人生

ためらわず踏み出してゆくわ

盤石な大地で咲かせる幻の花ーー宙組大劇場公演『アナスタシア』

とあるミュージカルライブのプリンセスソングマッシュアップで「Journey to the Past」にビビビッと一聴き惚れしたのが3年前。そのままアニメを観て、BW版の音源も聴きまくり、ついに初めて渡米もした思い出深い作品でもあるアナスタシア。宝塚版上演のニュースからずっと楽しみにしてきました。

  

fumi7july.hatenablog.com

 

そしてまた、アナスタシアととびきりの思い出を作ってしまった。なんと!なんと!初めてのSS席最前です。全ヅカオタが一度は夢見る奇跡を叶えてしまったよ。ギャ〜〜〜。今回は遠征から期間も開き、千秋楽を迎えてやっと夢から醒め正気に戻れつつある感想を書こうと思いますね。

 

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まず、宙組アナスタシアの感想を一言で表すならバランスの取り方がものすごく上手かった。もともとの作品が持つ要素から足し引きして、宝塚版として新しい存在を生み出す塩梅が本当に上手だったと思います。

例えばBW版とそのレプリカである梅芸版の公演では、他の公演では観たこともないような超巨大液晶パネルを使う映像が演出の売り。そのぶん大道具はシンプルで、舞台中央に設置された窓になるパネルと、左右の袖付近に設置されたクルクル回る小さな盆のようなセットでほとんど。おそらくツアーに持っていくのを意識しているんだろうなぁと思われるそれらが、どこか作品の豪華な世界観から浮いているように感じたのですよね。

そこを宝塚では大きな4つのパーツに分かれた大道具で街並みや室内を表現したり、映像を使いつつも盆を回すことで空間の広さを見せたり、一切こじんまりと感じさせなかった。宝塚らしさとBW版のブラッシュアップ、どちらの両立も叶えた改変に心が満たされました!大好きなBW版の唯一の心残りがこうして帰ってきてくれて本当に嬉しい……。

 

そしてストーリーの面でもバランス感覚の良さは健在。あの時代特有、ロシアという土地柄特有の無機質で冷たいイメージとファンタジーの入り混ぜなところが独特で魅力的なアナスタシアという作品を、出来る限り宝塚を守れるライン上でぴったり足並みを揃えたような演出、お芝居でした。先に載せた記事でも書いた通り、特に難しいのはヴラドだよなぁと思っていたのですが、ずんさん(桜木みなとさん)は本当に上手かった…。バチバチきてる3番手男役がお髭モフモフの中年男性ですよ。一体どんなヴラドを作ってくるのだろうと不思議だったのに、愛らしくチャーミングに見せかけて、一筋縄ではいかないあざとさ、悪賢いところ、全部大好きなヴラドそのものだった。しかもリリーとのシーンではバッチリ男役としての美味しさも決めてくるじゃないですか!?今思い出しても存在に感動して泣きそうになってくる…。一体なんでそんなに最高なんだろう、ずんさん。そして宝塚の一本物の旨味である銀橋渡りでは、キラキラになって帰ってきたずんさんにバッチリ釣られて本当に心臓が張り裂けそうでした。当然、そのあとの群舞でもめちゃ釣られました。七海ひろきイズムを感じる…すごい……。

まかたんのディマ、まどちのアーニャ、おキキさんのグレヴ、そらぴのリリー、すっしぃさんのナナ、りんきらさんのイトリポフ伯爵。まだまだ全然書ききれないけれど、組子みんながベストを尽くしていて、みんなが一丸となって宝塚のアナスタシアを形作っていたこと。本当に感動して胸が熱くなる思いです。そして稲葉先生にも心から拍手を送りたい!!

 

最後に、ここまで好き好きと言ったけれど東京に向けて変更してほしいポイントが一つだけ。できることならオリジナル通り、最後のアーニャからのキスシーンでトランクを踏み台にしてディマとの身長差を埋めて欲しいなぁ。まかまどにもっとときめけるのはトランクに乗る方だと思いませんか?突然のまどちの専科異動に私も動揺していて、もっと観たいものが沢山あるのに…という思いなので、最後はまかまどににしかない良いところや持ち味を欲張りなぐらい詰め込んで欲しいなと思います!

 

今は比較的チケットも取りやすいですし、宝塚版としてのバージョンアップも会心の出来なので、ぜひアニメ、BW版、梅芸版などのアナスタシアファンの方々にも観ていただけると良いなぁ。東京でまたあの素晴らしいオーバーチュアから始まる豊かなナンバーが聴けること、アナスタシアという幻の物語に出会えること、本当に今から楽しみです。